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August 22, 2004

「華氏911」を早速見に行く

マイケル・ムーア監督の最新作「華氏911(FAHRENHEIT 9/11)」を公開直後に、新京極に見に行った。さすがに話題作だけあって、僕たち夫婦を含めたミーハーな皆さんが長蛇の列(客層は色々。年齢層は若者中心だったが、お年寄りもそこそこいた。何故が外人と日本人のカップル、というのが目に付いた)。折角なので簡単な感想を書き留めておきたい(注意:多少のネタばれを含みますので、予備知識無く見に行きたい方は以下を読まないでください)。


まず、見終わったときの感想としては「面白かった。しかし予想通りだった」というものだった。予告編や様々な人の事前の評論を見聞きしていたせいもあるが、ほとんどの映像が「想定内」だったし、ムーアの主張も「思っていた通り」のものだった。前作の「Bowling for Columbine」を見たときのようなサプライズは無かった、というのが正直なところだ。
だが、それだからといって、この映画を腐すつもりはない。というのもこの映画は、何か秘蔵映像によって人を驚かせることを目的としたものというより(「ええっ、ブッシュがそんな人だったなんて全く知らなかった」と言って驚く人も中にはいるだろうが)、明確な一つの目的に向かってみんな(具体的にはアメリカの有権者)を動員しようとするものなのだから。だから何人かの評論家が「この映画は驚きがない」とか「すべて判っていることだけ」というようなことを言っているが、これはこの映画に対するいわば過剰な期待の裏返しだと思う(例えば宮台真司さんや「A」の森達也監督などがそのようなことを言っていたように記憶している)。

映画の構成は、今までブッシュやその周りのアメリカ政府の幹部連がどんなことをしてきたか(イラクへ肩入れしたり、逆に悪魔のように扱ったり、ビンラディン家の人に特権を与えていたり、兵士の給料を削減したり)ということを並べた部分と、主に兵士やその遺族を中心に「使われる側」の声をいくつか拾うという二つの部分に分けられるだろう。
前者の方は、これまでのニュース映像や、ブッシュ政権の幹部が関わっている大企業の「お仕事ぶり」が皮肉とともに示される。ムーアが主張している、ブッシュ寄りのコングロマリットにテコ入れするために様々な工作(テロの危険を以前から報告されていたのにそれを無視したりしたことも含めて)をしたという一種の「陰謀史観」をそのまますべて受け入れることは、僕は今のところ材料不足でできないが、そう説得されると「整合性」があるだけに、本当にロクでもない戦争に駆り出されているアメリカの兵隊と「同盟軍」のことを思い「うんざり」する。
後者の部分は、実際のイラクでの戦闘シーンや、負傷した市民、アメリカ兵を映して、何人かにはインタビューによってその本音を引きずり出している。イラク市民への無慈悲な扱いの告発は勿論だが、ここで注目されるのは、実はイラクに派遣されているアメリカ兵達も、アメリカの中の「弱者」がほとんどだ、ということだ。要するに貧困層を中心に「飯が食える」「奨学金が貰える」という餌でリクルートしている実態もこの映画で暴かれている。アメリカの中の「弱者」が外国では「加害者」になっている現実。「やりきれない」の一言だ。より無力な方向へ暴力が連鎖しているのだ。

さて、平和運動のきっかけの多くは「被害者」になることだろうが(この映画でも息子の戦死から平和運動をする母親が出てくる)、それを継続させる論理としては「加害者にならないため」のほうを優先するべきだと、個人的には思う。思うに、日本の平和運動はこの部分が弱かったと思うし、戦前のことを悪く言うな、という「自由主義史観」の皆さんには「軍隊に引っ張られた被害者たるあなたの祖父は、外国ではれっきとした加害者だった。そういうのが戦争の悲惨さなのだ」と言いたい。ちょっと余談でした。

あと、この映画で僕として「おおっ」と思った点をいくつか挙げておきたい。
・例の9/11テロの直後、フロリダの小学校の授業参観をしていたブッシュが事件のショックのあまり(?)呆然として為す術をすらないといった様子を見せるのだが、その彼の後ろに掛かっていた教室の標語が面白かった。曰く「Reading makes a country great(読書はお国のため←超意訳)」。「失読症」と噂される大統領の後ろの標語としては、上出来だと思った。
・イラクで人質となった日本人3人の「首切り脅迫映像」もしっかり使用されていた。実はこの映像を見るの、僕は初めて。
・装甲車や戦車のメーカーの幹部が、セレブの集まるパーティーで「(イラク戦争は)会社的には良いんだけど、人には優しくないよね(good for business, bad for people)」と言っていたこと(正確には違うかも知れませんが、こう聞こえました)。自分の会社の仕事をちゃんと判ってらっしゃる(反省の色はないけど)。
・アメリカの「愛国者法 Patriot Act」という法案の凄さ。しかも、それを制定したときの議員のほとんどが条文に目を通していないという驚愕の事実が明らかに。アメリカの国会議員も、ひどいもんだ。上院議員も、腰抜け揃いのようだし(この辺りは映画をご覧ください)。

ともかく、「今現在」の世界を確認するために見て損のない映画だと思います。

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