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January 04, 2005

GHQ陰謀史観

ネットをうろうろしていて、讀賣新聞の社説(2005/1/1)をちょっと読んでみたら、びっくり。確かに、僕は自分でも憲法やガンダムなどに関しては「保守的」だし、「抵抗勢力」だろうなあと自覚はしていたのですが(笑)、どうも僕はこの社説にいわせれば「戦後民主主義の残滓」の「守旧派」なのだそうです。
うーん、言葉を失うなあ。

 【「戦後民主主義」の残滓】

 こうした“守旧”思考は、文字通り「戦後」の数年間に、連合国軍総司令部(GHQ)の大がかりで巧妙な検閲・言論統制、マスコミ操作によって培養された「戦後民主主義」の残滓(ざんし)である。
 現行憲法の作成・制定過程そのものが最重要の言論統制対象だった。
 GHQが作成した現行憲法前文は、「平和を愛する諸国民」を信頼しさえすれば国の安全は保てるとする趣旨になっている。これに「戦力放棄」の九条二項が重なり、世界の実像とはかかわりなく一国平和主義が貫徹できるかのような「戦後」的幻想を生んだ。

でもこれって、よーするに「GHQ陰謀史観」ですよね。戦後日本人が精神的にフニャフニャになったのは全てGHQの陰謀だ、と言っているようにしか読めません。基本的に、「敵」を一元化して判りやすく解き明かそうとする陰謀史観を僕は全く信じませんし、陰謀史観的なことを言った時点でその人の知性に対しては、申し訳ないけど内心で軽蔑することを禁じ得ません。
愚にもつかない「ユダヤ陰謀史観」が、何故か日本で猖獗を極めていることは有名ですが、今度は「GHQ陰謀史観」ですか。「敵」を見つけることは戦略上大事ですから、その点は否定しませんが、その主張するところは全く僕の考えているところと正反対。
よしんばGHQの陰謀のようなものがあったとして、何故この社説を書いた人は、そこから自分だけは「抜け出すことができたのか」、そしてそれを自分で信じていられる信憑性の根拠は何、と小一時間(以下略)。
このような主張をするこの社説子は、当然ながら教育基本法だとか、軍事アレルギー感覚に対しても闘志満々です。

世界・国際社会の実像に対応すべき日本の現実的課題とはなにか。  米国は現在、世界的な規模でいわゆるトランスフォーメーション、米軍再編に着手している。イスラム原理主義勢力による最大のテロ標的国家として脅威の変化に対応するとともに、唯一の超大国としての長期展望に基づく世界戦略の再編でもある。  その一環として、北東アジアから中東に至る「不安定の弧」に対処するため、アジア・太平洋地域における即応展開能力を拡充しようとしている。  この動きは、日本の長期的な国家安全保障と切り離せない。日米協力・相互補完関係を展望すれば、集団的自衛権を「行使」する様々なケースを想定せざるを得ない。  「行使」は、憲法を改正するまでもなく、首相の決断による憲法解釈の変更次第で、直ちに可能になる性格の問題だ。首相および政治全体が、「戦後民主主義」的な軍事アレルギー感覚と一線を画す時である。

軍事アレルギー感覚と一線を画するときだそうです。確かにアレルギーは困ったものですが、なかなか直らないんですよ、花粉症やアトピーや喘息と同じで。そもそもアレルギーを引き起こした「原因」を考えるべきでしょう。あと、教育基本法については、以下のように言っています。

【改正すべき教育基本法】

 憲法とセットで制定された「戦後」規範の一つに、教育基本法がある。
 久しく改定の必要性が指摘されていながら、現在も、改定作業が難航しているが、最大の焦点は「愛国心」の扱いである。愛国心が是か非かなどということが議論の対象になる国など、世界中、どこにあろうか。
 こんな奇現象が生じるのは、「愛国心」と聞けば、反射的に「狭隘(きょうあい)な」という形容句をかぶせたがり、「戦前回帰」「軍国主義復活」などとして騒ぎ立てる“守旧”思考が、いまだに一定の勢力を有しているためだ。
 教育基本法策定の過程で、GHQは、日本側が主張した「伝統を尊重して」という部分を削除させ、「個」の尊重に力点を置く基調のものとした。
 伝統の尊重の否定=愛国心の否定は、公共心の希薄化につながり、今日の教育の乱れを招いている。「個」の尊重が、ともすれば児童・生徒の自主性の名のもとに放任へと傾き、規律心の低下、さらには昨今の学力低下にもなっているのではないか。

今の教育が万全なものではないのは、百も承知です。僕だって、一応教育の末端にたずさわっているものです。しかしこれも、上記と同様、GHQ陰謀史観ですよね。
愛国心バリバリの時の教育がどんなものだったか、まさか知らないとはいいませんよね。あの時代が理想的だ、とおっしゃるならそれまでですが。

メモのようになってしまいましたが、読んでいる内にどっと疲れが出てしまったので、簡単ですが以上で。

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Comments

憲法を意識するより、ガンダムを意識する時間の方が「圧倒的」に多いumetenです。
とはいえ、僕は「リベラル」なガンダム観、あるいは「Gガンダム」をも容認するある種「アナーキー」なガンダム観を持った人間ですので、その立場からすると、ややもすれば「抵抗勢力」は、ゲル・ドルバ線上に置いてしまいたいといった誘惑に駆られもします。


さて、
アレルギー持ち、アトピー持ち、花粉症持ち、鼻炎持ち、喘息持ちとして、一つだけ言いたいのは、
「アレルギー」という無対象なアナロジーにまつわる問題です。
これを「言葉狩り」にならないように問題化するのは、とても難しいことだと思うのですが、
アナロジーとしてのそれを、たとえレトリック上のテクニックとしても、一旦「具体化」してしまうと、そこには現実の症例があり、個々の症状の軽重がありしてくるわけで、さらに言えば、もはや対処療法しか道が無い状態の方もいます。
そういったところで、「直さなければならないもの」としての「アレルギー」(というアナロジー)を、具体的な症例化して語ってしまうと、そこにはその具体的な症例を抱えた人間に対する「妙な空気」=プレッシャーが生じてしまう・・・そんなような気がします。
もちろん、ここはある種私的な空間ですので厳密さを求める必要は無いのですが。。。。

ま、某「ジャーナリスト」みたいな差別主義者は論外ですが、
とかく表現とは難しいということで。

Posted by: umeten | January 06, 2005 at 12:22 AM

umetenくんへ、いつもコメントありがとうございます。

>そういったところで、「直さなければならないもの」としての「アレルギー」(というアナロジー)を、具体的な症例化して語ってしまうと、そこにはその具体的な症例を抱えた人間に対する「妙な空気」=プレッシャーが生じてしまう・・・そんなような気がします。

というご指摘はごもっともです。僕も、あの社説の揚げ足取りをしたかったんだけど(揚げ足取りの常套手段としては、向こうが言った言葉をそのまま使って意味を少しずらす、というのが手ですから)、ちょっとうまい表現が見つからなかったのですね。
で、喘息もちとして言いたかったことは(19歳、つまり大学2年生の時に発症しました)、喘息や花粉症には空気汚染やハウスダストや杉の過剰植林という原因があるように、「戦争・軍事アレルギー」には、60年前の戦争の惨禍があるということ、ただそれだけなのです。その「原因」を忘れてはいけない。
「直すべき」と考えてアレルギーに対処療法を施すより、転地療養など、その「原因」そのものを取り除くこと、要するに非軍事的な方面に理想主義とは知りつつも邁進すること、僕の考える「アレルギー対策」はそういう方面です。
もっと言えば「原因」を知ることを奇貨として、前向きに生かせないか、という処世術なんですけどね。実も蓋もないかな・・・。

Posted by: 川瀬 of Joytoy | January 06, 2005 at 12:58 PM

あけおめです。
ちょっとレベルの違う話にはなりますが、しかし、左翼や市民運動もまた、逆の謀略史観が好きですよね。
全体主義や謀略史観は、我々が思っているほどは遠くにあるものでない、と9.11以降のニュースを見てたりして思います。

Posted by: こいけ | January 14, 2005 at 01:51 AM

こいけさま

>しかし、左翼や市民運動もまた、逆の謀略史観が好きですよね。

まあ、そうですよね。鈴木邦夫さんの『公安警察の手口』なんか読むと、「公安陰謀説」をますます脳内で強化してしまいそう(笑)。

>全体主義や謀略史観は、我々が思っているほどは遠くにあるものでない、と9.11以降のニュースを見てたりして思います。

それは全く同感です。
昨今の日本社会を観ると「全体主義っていうのは、もしかしたらこういう形で進行していくんじゃないだろうか」と感じて、ぞっとするときがあります。
世界を見わたすような大きな次元でなくても、例えば職場とか業界(学界)内での「陰謀史観」って、結構ありますよね。敵をはっきりと見定めているつもりで、実は単なる「陰謀史観」だったりして。そうならないように「あの人はこういうところは良いけど、こういうところがダメ」という形で、人物評価を単純にすることは避けようと思っています。

Posted by: 川瀬 of Joytoy | January 14, 2005 at 02:01 PM

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