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« 妄想ですよ、自民党さん | Main | 受け止めて、変化できること »

October 07, 2005

耳元でささやかれ続けると

夕刊の一面に「自民党憲法草案」の記事が載っていた。絶対与党となり、いよいよ牙をむき始めた感もあるが、内容は昔から自民党が言ってきたことで、ある意味一貫してはいる(感心はしないけど)。自民党内の「新憲法起草委員会」の委員長は、「神の国」森センセイ。この人選だけでも、絶望的になるのは避けられまい。
記事によると、

原案では、国の基本理念として「日本国は、民主、人権、平和を国の基本として堅持する」との表現で、現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3 原則を継承する考えを表明。そのうえで、特徴として(1)愛国心の明記(2)天皇制に触れつつ国の成り立ちを紹介(3)国防の意義の強調(4)「自主憲 法」との明記――などが挙げられる。

とのこと。あと、「国際平和を誠実に願う」「国際社会において圧政や人権侵害を排除するよう努力する」との表現で、積極的に国際貢献に取り組む姿勢を示しているそうですが、その前に自分の国の中で圧政を敷いてどうする、と一言言ってやりたいのも事実(笑)。
でも、こういう動きをバカにはできない。
「愛国心は押しつけるものじゃなくて、いい国作りをしていれば自然と身に付くもの」
という正論があり、もちろん僕もそれに賛成だが、耳元で四六時中「愛国」「愛国」と言われれば、嫌でも身に付くものなのは、戦前の経験と独裁国を見ていれば判る。

この記事を読んでいて、思い出したのは、丸山眞男による中野好夫評だ。二人とも戦後の言論界をリードした知識人であるが(ちなみの僕は両者のファン。両者の全集を持っています。丸山のは、妻から奪っちゃったんですけど)、尊敬すべき先輩である中野を、丸山はこう評している。

中野さんほどの知性を持った人が、国策が決まった以上それに従うのが国民の義務だ、ということを信じて違わなかったということは、中野さんが正直に書いているだけにぼくらにとってはおどろくべき問題ですね。国家を超えた価値というものにコミットしていないということです。明治生まれの日本国民が、幼児から叩き込まれた教育というものがいかに恐るべきものであったかということも示しています。(中略)国民の義務とは何なのか、本当の愛国心とはどういうものか、その時々の政府が決定したことが国策となるとき、それはほんとうに日本の国家にとっていいことかどうか-それは国家が決めることじゃなくて、国家を超える価値を基準として初めてその国家がやっていることが正しいかどうか判ることです。その自明の理を中野さんのような知性といえども戦争前まで気がつかなかった。(丸山眞男「中野好夫氏を語る」、『中野好夫集月報11(第8号)』筑摩書房、1985年、p.12。現在は『丸山眞男集』12巻、岩波書店に所収)

丸山のこの中野好夫評は、非常に印象的だった。中野ほどの超インテリでもある意味越えられなかった「愛国」という枠(中野は人並み外れて「誠実」だったから、こういう事も口にした、とも評せるのだが)。しかし、一方では、

自分の戦前・戦中の経験をバネにして、二度とその過ちを繰り返すまい、という態度を持続的に(原文傍点)貫き、その反省を通じて自分の「思想」を変えていったかどうか(中略)中野さんは戦争直後の文章で「あのあまりに大きすぎる一連の代償から学んだ最大教訓の一つというのは、近代社会の市民というのは専門、非専門にかかわらず各人の信念はもし機会があれば表明すべきであって、それが市民の最大義務の一つだ。満州事変以来、国民がこの義務を実行していたら、たとえ暴力的抵抗に訴えるというようなそんな極端なことをしなくてもあの破局は食いとめられたのではないか」という趣旨を書いています。これは何でもないことのようで、実は日本に一番根づきにくい考え方です。(中略)中野さんは書物の中からでなくて、自分自身の戦前・戦中の体験から、これを体得して実行した。(同上、pp.10-11)

と、これまた重要な指摘をしている。恐らく「愛国心」(この「愛国心」が偏狭なものであることは言わずもがなだ。僕はそういうのを本当の愛国心とは認めたくはない)を憲法や教科書に盛り込みたい人々は、「国民なんて、耳元でささやき続ければ、どうにでもなるもの」と思っているのだろう(ささやきどころか大音量の恫喝かも知れないけど)。事実、そうい う側面があるのは否めない。しかし、このまま言われっぱなしでは腹に据えかねるので、ささやかながら、抵抗したいと思っている。例えば、こういうブログという道具を手にして、言いたいことが言えるわけですし。僕も、この偉大な二つの知性の顰みに、ささやかながら習いたい。

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Comments

>自民党内の「新憲法起草委員会」の委員長は、「神の国」森センセ>イ。この人選だけでも、絶望的になるのは避けられまい。
>その前に自分の国の中で圧政を敷いてどうする、と一言言ってやり>たいのも事実(笑)。

思わず「ぷっ」と笑ってしまいました。よりによって森とはなあ…。

しかし、笑い事として済ませられないですね。民主党も、何を考えてるんだか、「改憲」には非常に熱心ですし。まあ、そうやって、政権担当能力があることをアピールするつもりなんでしょうけど、二大政党で両陣営が似たような主張をしたって、結局人気のないほうが破滅するだけなのに。
「マニフェスト」とかいって、政策で勝負するという着眼点「だけ」は良かった気がするんですが、このままでは宝の持ち腐れ必至でしょう。

masatixくん
僕が引用した丸山の言葉をちょっと借りると、
「国家を超える価値を基準として初めてその国家がやっていることが正しいかどうか判ることです」
という部分、大事に考えたいんですね。日本国憲法は何故素晴らしいものなのか、という問いには、僕は「一国の価値を超えているから」と答えたい。だから、愛国心だとか、その国でしか通用しないような、そういう夾雑物を前文に入れようとするのには真っ向から反対したいわけです。まさに「わざわざレベルを落としてどうする」といいたい。
民主党については・・・、止めましょう。暗くなっちゃう(笑)。

 ご無沙汰です。
 郵政民営化法案も、残念ながらあんなことになってしまい、益々憂うつな日々です。

 既にご存知かも知れませんが、愛国心云々に関して、最も説得力を持つ論考の一つを
ご紹介しておきたいと思います。

池澤夏樹・パンドラの時代
007 愛国心について
http://www.impala.jp/pandora/archives/000111.html

 書かれた時期の関係で、オリンピックとか今の時節と合わない話題が出てきますが、
我々を大変勇気づけてくれる文章だと思います。

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