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October 05, 2005

妄想ですよ、自民党さん

今朝の朝日新聞で「「ジェンダー」迷走中」という記事が目にとまった。要するに、この「ジェンダー」という用語に対して、自民党が「ジェンダーという言葉は使うな」「文化が破壊される」などのいちゃもんをつけ、来年度改定予定の「男女共同参画基本計画」が揺れているんだとか。どうやったら、文化が破壊されるんだか。ただ「男だから、女だからって最初から不利になるような状況は良くないから改めましょうね」って言うことの、どこが文化破壊なのか。

最初に申し上げるが、自民党のいちゃもん(いちゃもん、としか表現しようがない)は、はっきりいって、妄想ですよ。何でこんなアホなことを堂々と開陳できるのかなあ。自民党のアンチ・ジェンダーフリーのグループの代表は、例の安倍晋三氏。ああ、こういう人なら、やっぱ陰に日向にNHKのああいう番組を作ったスタッフに圧力はかけるだろうな、というのはさておき、自民党のこの「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実施調査プロジェクトチーム」というのは、どうも根本的に「ジェンダーフリー」というものを誤解しているし、そういう脳内で構築された仮想敵を現実に投影している姿は滑稽である。彼らの語る「過激で文化を破壊するようなジェンダーフリー教育」などは、はっきりいってデマゴギーだ。まあ、学者でも、西尾幹二氏や八木秀次氏のように妄想を垂れ流す輩はたくさんいるから、学問のない議員先生をばかり責められないが(丁寧につっこみを入れたchikiさんに感服。僕なら、途中で挫折する(笑)。この二人の会話、ほんとオヤジ臭がして、同性ながら嫌になる)。いや、一応学者だからこそ、彼らの方が罪は重いだろう。

自民党のみならず、ネット上でも「アンチ・ジェンダーフリー」を標榜する人が大勢いるが(「フェミナチ」などという汚らしい言葉を用いて、まるで自分が特高警察の取調官にでもなったかのような思い違いをしているらしいけど)、彼らは何を「恐れて」いるのか。一番分かり易い理解としては「既得権」が脅かされる、というものだろう。男性の既得権はもちろんのこと、最近なら女性の側からもそういう声が聞かれる。だから、その「既得権」を見直そうっていう「ジェンダーフリー」にあれほどの敵意をむき出しにするのも、まあ、判らなくもないが、端的にみっともないよね。「既得権」にしがみつく姿を良くないって叫び続けたのが、小泉改革じゃなかったんでしたっけ?違っていたら、ごめんなさい。
自民党がこの問題とリンクさせて考えているであろう「少子化問題」にしても、「環境の整備」しか、もはや道はないのも明白だと思うんだけどなあ。どうして精神論に走るのか。まあ、その方がお金がかからないし、自分の今までの考えを否定しなくてすむから精神的にも楽なんだろうけど。

自民党の女性議員も・・・まあ期待できないだろうな(野田聖子氏も、今はハブにされているし)。今回当選した片山さつき氏なんかが、ある意味典型ではないかと勝手に思っているのだが、いわゆる「できる女性」は、自分の力で今までの人生を切り開いてきた自信があるので、却ってフェミニズムやジェンダーフリーのような考え方には理解を示さない、ということがよくある気がする(私事だが、大学時代の同級生で、そういうことを公言する友人がいた)。もちろん、自分が切り開いた道を再び閉じさせるわけにはいかないと考えている人も多いとは思うが。

僕も大学でジェンダー関連の講義を受け持ったことがあるが、上記の自民党の大人の皆さんより、大学一年生の諸君の方が聞き分けが良かったですよ。やれやれ。

追記:上記で引用した西尾・八木の居酒屋談義を斬りまくった「成城トランスカレッジ!」のchikiさんが、「ジェンダーフリーとは」というナイスなページを作成なさいました。どうぞこちらもご覧ください。Q&A方式で「ジェンダーフリーとはどういうものか」と言うことが的確に分かり、大笑いしながら反ジェンダーフリーのバカバカしさが分かります。(05.10.06)

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Comments

西尾さんや八木さんみたいに自分の好みを押し付け、挙句の果てには気に入らないと他人の思想を狂気呼ばわり、こういうのにはうんざりですね。
今、私のブログでは専業主婦について書いていますけど、保守の思想と言うか、市民として個々を捉える習性のない人たちは男ばかりでなく、女性の中にも多いのではないかと考えています。
経済的不平等の話が、なんといいますか、敷島の伝統の話になったり、母性と愛情の話になったりする。
ジェンダーフリーは、別に男女の性差をどうこうしようという話ではなく公的な局面においては性差を「関係のないもの」として扱おうとする態度であると思いますが、市民社会ではこれは本来当たり前のことですよね。ただしそのための環境整備が不充分であるから、意識改革が必要なだけで。
幸いなことに先の千葉県知事選挙で落選した森田健作氏はジェンダーフリーを目の仇にされておられて、「男の子をオカマにする云々」とおっしゃっておられましたが、オカマってのは「する」ものではなく「そうである」ものですから、仮にも公的な立場にあった方がこのような偏見丸出しのことをおっしゃられるのを本当に悲しく思いました。

Posted by: standpoint1989 | October 05, 2005 at 11:19 AM

こんにちは、いつもlurkerでブログを黙々と読ませていただいるMicahです。どうもお久しぶりです。

何十年もまえに、性別などによる差別を禁止する「男女同権憲法修正案」(Equal Rights Amendment)がみごとに不成立になってしまったアメリカの人ですが、日本でも「ジェンダーフリー」が政治の場で批判を浴びているのを、少し残念に思っています。

しかしそう思うと同時にお聞きしたいことが一つあります。

こちらでは、「ジェンダーフリー」を批判する根拠は多くの場合、露骨にも宗教的な話が持ち出されます。たとえばキリスト教原理主義者たちは、いわゆる「聖書の教えに反する」性別による役割分担(gender roles)をすべて否定したりしているのです。所詮、「既成権」を失いたくないのは日本と同じはずですけど。

それで、素朴な質問です。日本では、そういう宗教イデオロギーと同じような役割を、何が担うのでしょう?西尾幹二氏たちの本を読めば、そういうのは分かるでしょうか?

Posted by: Micah | October 05, 2005 at 12:23 PM

standpoint1989さま、お久しぶりです(ずっとブログは拝見していますが)。
僕も、今回のエントリを書きつつ「専業主婦」ということを考えていました。実際は、「既得権」と言えるようなものではなく(standpointさんがおっしゃるように、扶養者控除やケアワークの免除など、一番得をしているのは「夫」ですから)、既得権と思わされている、と言う方が正確だとは思いますけど。

>ジェンダーフリーは、別に男女の性差をどうこうしようという話ではなく公的な局面においては性差を「関係のないもの」として扱おうとする態度であると思いますが、市民社会ではこれは本来当たり前のことですよね。ただしそのための環境整備が不充分であるから、意識改革が必要なだけで。

おっしゃるとおりだと思います。僕は、本当に素朴なレベルで、こういう「合理的」なことに反撥する、非合理的な皆さんの頭の中が分かりません。

Micah様、いつも読んでくださってありがとうございます。

>それで、素朴な質問です。日本では、そういう宗教イデオロギーと同じような役割を、何が担うのでしょう?西尾幹二氏たちの本を読めば、そういうのは分かるでしょうか?

確かに、日本には、アメリカのように目に見える「宗教右翼」の存在はないのですが、保守的な傾向を持つ宗教教団はたくさんあります。もちろん、一番保守的なのは神社界なのですが。
最近の日本においては、目に見えないのですが、保守的なイデオロギーを何となく支持する勢力というのが、薄く、広く存在しているような気がします。具体的には、西尾幹二氏などが中心になっている「新しい歴史教科書をつくる会(http://www.tsukurukai.com/index.html)」
とかですね。この団体の構成員は、Micahさんもご存じのように、いわゆるrevisionistの集団なのですが、反ジェンダーフリーを支持する人と、大きく重なっていると思います。そういう意味で、確かに西尾氏の本を読めば「日本の反ジェンダーフリー」は分かりますが、日本人として、非常に恥ずかしいので、読んで欲しくはありません(笑)。

Posted by: 川瀬 | October 05, 2005 at 05:53 PM

川瀬先生

お返事をご丁寧に、どうもありがとうございます。

「つくる会」のことを知らなすぎて恥ずかしいですけど、やはり知るのが重要でしょうね。日本にいたころ、小熊英二・上野陽子両氏による研究書『<癒し>のナショナリズム』を買っておいて、いまだに積んどくしていますが、やはり読んだ方がいいのでしょうかね。ちなみに、それと同じような、新しい研究は最近出ているでしょうか?

今、特に関心があるのは、「つくる会」などの歴史修正主義や、反ジェンダーフリーという考え方にどうして説得力・魅力が生まれてくるのか、ということです。その何となく、薄く、広く存在しているイデオロギーをもう少し具体的に知ることができたら、と思って。

しかし「つくるかい」が出している本などを読まないとなると……ちょっと……学者を目指している者として、だめですがね。(苦笑)

Posted by: Micah | October 06, 2005 at 12:45 AM

Micah様
『<癒し>のナショナリズム』は、「普通の市民のナショナリズム」をうまく捉えた好著と思います。「つくる会」は何も狂信的なrevisionistが行っているのではない、というのがこの本で分かります。少なくとも、運動の中心にいる人々は、「自分たちこそ普通の市民だ」という自己認識を持っています。「つくる会」の本を読むよりは、こちらをおすすめしますよ、もちろん。
これに似た最近の研究は・・ちょっと思い出せません。済みません。

>今、特に関心があるのは、「つくる会」などの歴史修正主義や、反ジェンダーフリーという考え方にどうして説得力・魅力が生まれてくるのか、ということです。その何となく、薄く、広く存在しているイデオロギーをもう少し具体的に知ることができたら、と思って。

Micahさんがおっしゃるように、「何故説得力が生まれてくるのか」というのは重要な問題です。僕もまだはっきりとした答えを見つけたわけではないのですが、身も蓋もない言い方をすれば、やはり「日本の経済面における自信喪失」というのは大きな要因でしょう。80年代後半から90年代初めに、日本は調子に乗りすぎていたわけですが、あの時期はいわゆる「Japan as No.1」論が幅を利かせていましたね。逆に言うと、「つくる会」のような日本のナショナリズムや歴史修正主義は、経済力がそこそこ回復すれば、結構なくなるのではないか、という楽観的なものの見方を、僕はしています。

Posted by: 川瀬 | October 06, 2005 at 09:21 PM

川瀬さん 今晩は

一度お聞きしたいと思っておりましたが、川瀬さんは助産士 いわゆる男性助産婦の制度をか否かについてどう思っておられるでしょうか?これは確か減法務大臣の南野千恵子参議院議員が提出しましたが、廃案になったようなのですね。当時の社民党の中川智子議員が反対陳情の署名を提出しています。どうも女性の多くは反対のようなのです。

ジェンダーフリー論者の方がこの問題について発言しているのを探しているのですが、うまく探し出せません。性別に囚われることなく個々人の個性を最大限に発揮し、すべての人が「自分らしく」生きられる社会こそが理想だと考えていらっしゃる方は男性であっても生命の誕生にかかわる崇高な仕事をしたいと考えいている男性の職業選択の自由を奪うなどということはもちろん反対で、男性助産士大歓迎であるはずです。

私ですか?もちろん反対です。理由はキモイから。それだけ。

参考
http://www.hi-ho.ne.jp/taka_anzai/gender/gender15.html

Posted by: 如月イレブンth | October 06, 2005 at 11:25 PM

如月さん、こんばんは。
僕はこういう場合、シンプルに考えることにしています。それは「受ける側がどう感じるか」ということです。
ですから、リンク先で批判されているような意見に近いと思いますが、最初から門戸を閉ざすのは、というのも判ります。ですから、僕だったら助産師さんになりたい男性には「なるのはどうぞご自由に。でも、指名が付かずに食べていけない、という事態になっても仕方ないと思いますが」と言うしかないと思います。残酷なようですけど。助産師さんをまるでホストにたとえるようで恐縮ですけど。

Posted by: 川瀬 | October 07, 2005 at 12:56 AM

TB&言及、本当にありがとうございます。なぜバックラッシュが説得力を持つのか、を含めて推敲させていただきます。たまに遊びに来てください。お礼のみにて失礼します。

Posted by: chiki | October 07, 2005 at 05:47 PM

chikiさま、いらっしゃいませ。実は、ハテナではid:t-kawaseの川瀬です。持っている二つのブログからTBを送らせていただきました。
僕も、おっしゃるように、バカにするだけではなく、バックラッシュが何故説得力を持ってしまうのか、ということをもうちょっと丁寧に考えたいと思っています(共感が全くできない思想について考えるのって、難しいですけどね)。

Posted by: 川瀬 | October 07, 2005 at 06:43 PM

ジェンダーフリーに興味をもって、ネットを彷徨っているうちに
ここにたどり着きました。

さて、ジェンダーフリーについてですが、私は正直、今までの経験上、
あまり良い印象を持ってません。

学生時代の教師が「男女同権」だの「ジェンダーフリー」なんて言葉が
大好きで、口癖な人でした。

ある日、生徒会の選挙で男性候補と女性候補が一騎打ちになった際、
「男女同権の見地から、男性よりどれだけ能力が劣っていも
女性候補に投票すべき」なんてすてきな発言をされました。

また、「あらゆる選挙で女性が当選しないのは女性差別のせい」だの
「男性は女性のためにはあらゆることを譲るべき」なんて発言もあったり・・・。
ま、成績も女性と男性では評価が違ったりもしましたし(笑)

他に私が出会った「ジェンダーフリー」や「男女差別」を主張する人は、
何も聞いていないのに勝手に議論をふっかけてきたり、雛祭りや童話は
全て女性差別だなんて主張するような、ちょっとアレな人でした(笑)

ここにコメントを残しているchikiさんのサイトを読む限り、
ジェンダーフリーを主張する人が、私の出会ってきた人のような人
ばかりではないと、今更気づいた(笑)ので、これからサイトや
書籍で勉強からしようと思っております。


>ああ、こういう人なら、やっぱ陰に日向にNHKのああいう
>番組を作ったスタッフに圧力はかけるだろうな

この件に関しては、朝日新聞もちょっと信用できないんですよね。
信用に足る証拠も出し切れてないように思えますし・・・。

NHK側のプロデューサーは、この番組で取り上げられている市民団体と
繋がっているようですしね・・・。

市民団体が、必ず正しいことを言っているわけでもないですし、
今のところ、どちらにも与することは出来ませんわ。

Posted by: ゆた | November 06, 2005 at 09:41 PM

ゆたさん、ジェンダーフリーに関する誤解が解けたようで、何よりです(笑)。
NHK番組問題については、済みません、僕はどちらかというと「市民団体」の側に立っておりますので(知り合いも多いですし)。まあ、自民党のあの人たちが「シロ」とは到底思えないんですよね、普段の言動からして。

Posted by: 川瀬 | November 09, 2005 at 01:43 AM

川瀬さん、レスありがとう御座います。

いや、正味の話、まだ誤解は完全には溶けてなかったりして・・・。
思春期に受けた印象は、なかなか拭えないもんですね(笑)

市民団体に関しては、近所のある平和を訴える団体の方から、子供の頃、
父親の悪口を散々言われたりしましたから、そっちの嫌悪感の方が、
ジェンダーフリーの問題より大きいかもしれないなぁ。

「お前のオヤジは人殺しを商売にしてる」なんて、子供の頃に言われたら
そういった人たちのことを嫌いにもなりますって(笑)
つーか、その団体の方、その団体の代表者だったみたいなんですよねぇ・・・。

あ、父親は自衛官でした。子供の頃は、そういったことから、
父親の職業を恨んだもんです、はい。

Posted by: ゆた | November 11, 2005 at 07:24 PM

ゆたさま、僕も友人に父親が自衛官で、小学校の時先生から嫌な目に遭わされたというのがおりますから、お気持ち、お察しいたします。
平和や反差別を言いながら、心が狭い、という人は、残念ながら僕の周りを見てもたくさんいます。もしかしたら、僕もその一人かも知れませんけど。
ですから自戒を込めて、主張が「大同小異」ならぐちゃぐちゃ言わない、というのが僕の基本的スタンスです。なかなか賛同が得られないんですけどね(笑)。

Posted by: 川瀬 | November 11, 2005 at 07:53 PM

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