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January 06, 2006

25メートル泳ぎ切ってくれ

卒論を抱えた皆さんへ

最近は僕がどこに行こうが逃げようが、メールという素晴らしいもののおかげで(当然、僕が皆さんと同じくらいの時は、こんな便利なものはありませんでした)、書きかけの卒論を送りつけられるようになり(皆さんにとっては可能形、僕にとっては受動形)、お正月から今日までで、およそ6本の書きかけの卒論を読む羽目となりました。さすがに疲弊してきました。

個々人には、朱を入れたものを渡して個別指導をしていますので、ここでは、皆さん全体にちょっと抽象的な「お説教」をしたいと思います。

皆さんの論文は、なかなか良くまとまっているのもありますし、目の付け所が鋭いものもあります。僕も君たちを指導しながら、全く知らないことを吸収させてもらっています。

でも、全般的に言えるのは、君たち、ちょっと諦めのいい人が多いと思います。どういう事かというと、「ま、この程度で良いよね」という感じで止めてしまって、せっかくの着眼点が生かされていなかったり、細かいミスが結構あったり(注でページ数を示していないとか、誤字脱字は言うまでもありません)、もうちょっとで良いのが・・・というのが今の段階では多いのです。まだ〆切まで一週間ちょっとある段階でここまで、という言い方もできますが、僕としては、水泳で喩えると、25メートル泳ぎなさい、とこっちは言っているのに、20メートルほど泳いでプールの真ん中で足をついて「もう結構泳いだんだから、このあたりで良いでしょう」と僕を振り返って見ている、という感じがするのです。非常にもったいないことです。あと2掻き、3掻きでゴールなのに。

提出日ギリギリまでやってしまうという諦めの悪さはもちろん論外ですが(毎年いるんだ、こういうのが。そうならぬように)、もうちょっとディフェンシヴに振る舞ってください。具体的には、達成できない目標などを「はじめに」で打ち立てるな、ということです(笑)。そういう「最初の宣言(看板)に偽りあり」というのを我々は見逃しません。「ディフェンシヴに」というのは、ちょっと小ずるく立ち回れ、という意味です。提出日の前日にプリントアウトと製本が終わっているくらいの「諦めの程々の悪さ」と要領を期待しています。

僕個人が君たちに行っている指導は、基本的には「論文の形式」のことだけです(もっとこの辺りを深くつっこめ、という類の指導は行っていますが)。内容については、個々人の努力と能力に委せています(そこそこ委ねられるのですから、君たちは優秀なのです。自信を持ってください)。ですから脚注とか、章立て、段落、誤字・脱字、そういうことばかりチェックしています。でも、こういう形式上の基本的な事を疎かにしていると、本文でなかなか良いことを言っていても、僕たち教員は「20メートルだな」と判断せざるを得ません。そう思われたくないなら、僕たち教員の意地悪そうな顔(笑)一人一人を思い浮かべながら、「先生に突っ込ませてなんか、やるものか」という気持ちで書いてください(僕も最近、君たちへの個人指導で「口頭試問の時、○○先生ならこう突っ込んでくるかも知れないよ」と脅しを掛けているでしょ?あれはディフェンスのシミュレーションです)。形式上のしょーもないことでケチを付けられても、つまらないでしょ?そういうミスをなくす姿勢が「ディフェンシヴ」であり「25メートル泳ぎ切ること」でもあるのです。
内容についての突っ込みなんて、我々のような「プロ」だろうが、突っ込まれるときは突っ込まれます(学者って、そういう商売です)。僕もこの前、偉い先生数名に囲まれて満身創痍で帰ってきたこともあります(笑)。内容への突っ込みは、当たり前のことですから、それは恐れずに(もちろん、手を抜けといっているのではありません)、まずは細かいミスを徹底的になくしてみてください。

ご健闘を祈ります。

追記:TBを送ってくださった弓山先生も、似たような思いでいるらしい。難しいよなあ、「要領良く」とは思うけど、あまりにも要領が良いと(「これくらい叱られるのは想定内」と想定しちゃうことも含めて)ちょっとだけ腹立たしいだなんて、教員側の勝手な思いなんだけどね。

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Comments

タイトルを見て、この寒中に???と思って読ませて頂いたのですが・・・

大変、励みになりました。卒論ではありませんが、博論を抱える身として、お言葉を受け止め、七草に心を新たにして、西の果ての地で頑張ります。

Posted by: Grace馨子 | January 07, 2006 at 01:37 AM

Graceさん

>卒論ではありませんが、博論を抱える身として

いや、そんな偉い人に向けたメッセージではないのですよ、これは。そういう人に言われると、却って僕の権威が危なくなります(笑)。

Posted by: 川瀬 | January 07, 2006 at 12:25 PM

まるで自分のことを言われてるようです。「1週間ってなんかやるには短いしね~」なんて会話してました(^^;

Posted by: ふろむとーきょー | January 07, 2006 at 10:15 PM

いやいや、ふろむとーきょー君も、もう「偉い」んですから。
確かに、一週間前にだいたい出来ちゃうと「もうちょっと詰めよう」という気持ちが萎えるっていうのはよ~く判ります。大体、上で書いていることは、昔の僕を思い出して、過去の自分に説教するつもりで書いているんです。「詰めが甘い人間」を見ていると、自分を鏡で映すような気持ちになって、腹が立つわけです(笑)。

詰めの甘いセレッソ大阪のようなチームが好き、というのも、そういう深層心理が働いているのかも知れません。

Posted by: 川瀬 | January 08, 2006 at 01:02 AM

すいません、当日昼までいじってました……その後、東急ハンズに製本セットを買いに行って自己製本!
うちの学部では毎年毎年、締め切りに数分間に合わずに留年する学生が複数いたんですが、泣いている子がよく居ました

Posted by: おーつか | March 06, 2006 at 01:07 PM

おーつかさん、そういう非情な大学の話も良く聞きますね。閉められた教務課のシャッターの前で泣き崩れる子が続出、とか。
僕の大学の超裏技として、とにかく「黒表紙」と何枚かの紙を挟んで提出して(偽の札束みたいなものです)、事務から各研究室に助手が持っていく道すがら、助手を掴まえて、拝み倒して、本編と差し替える、というのがありました(笑)。

Posted by: 川瀬 | March 06, 2006 at 02:14 PM

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Tracked on January 08, 2006 at 12:52 PM

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