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September 23, 2008

津和野への旅

山口大学に22日から26日まで集中講義に行きました。23日は春分の日でお休みなので、思い立って、山口線でぶらっと津和野の方面に向かうことにしました。電車の本数が思った以上に少ないのが難ですが(一時間に一本のペース)。
僕はこのところ講義で幕末維新期の宗教史のことをしゃべっているのですが、そのあたりを研究していると、有名な国学者の出身地(大国隆正とか福羽美静とか)及び復活キリシタン(浦上キリシタン)の流配先として、津和野という地名は気になっていたのです。近代史においては、西周とか森鴎外の出身地として知られているでしょう。
乗ったのは、観光SLとして特別に運行されている「やまぐち号」。僕は最初、こういう特別列車に乗るつもりはなく、普通の快速とかでもいいやと思って004いたのですが、午前中に津和野に向かう列車はこれしかなく、否応なく指定席を取って乗ることになりました。
列車はほぼ満員で、家族連れ、団体旅行、「乗り鉄」、「撮り鉄」の皆さんに周りを囲まれる形となって(一人旅の方が珍しいので目立つ。そのせいで、隣のおばさま四人連れに声をかけられて「お兄さん、一人旅で気楽やねえ、大学生?」と訊かれました。ちょっとショック)、彼らのテンションに感染しちゃって(笑)、僕も長時間停車する駅では列車から降りて、SLの写真を撮りまくっちゃいました。驚いたのは、線路の脇から写真を撮る人の多さです。沿道にずっと途切れなくいて(おそらく車で待ち伏せして撮っている人でしょう)、何の気なしに乗っていることに申し訳なささえ感じたほどでした(特に僕は「鉄分」の足りない人間ですから)。

山口から約一時間四〇分ほどで、津和野に到着。実は、これが僕の初島根県入りです。
駅につい029てまず向かったのが、浦上キリシタンの殉教の地「乙女峠」。いきなりこちらに向かう人はほとんどおらず(中心街の正反対ですから)、僕はこれ以降、しばらくはほとんど他の観光客ともはち会わず、静かな道を歩くことになりました。ここはよかったですよ。今はカトリック教会が「マリア堂」という記念の聖堂を建てたりしているのですが、元々ここには廃寺が存在し、明治初年に長崎から流されたキリシタン達が閉じこめられ、ひどい仕打ちを受けた場所なのです。「ここで高木仙右衛門や守山甚三郎(浦上キリシタンのリーダー。ひどい拷問にあっても棄教せず、長崎に帰り天寿を全うした)が拷問されたのか・・・」と思うと、思わず他の殉教者のために祈りたくなってしまいました。そこでこの「乙女峠」に関するパンフレットを二冊購入。

しばらくこの殉教の地にたたずんでいると、ある道しるべが見えました。それは、殉教者達030 をまつったお墓への道でした。しかもその山道は、キリストのゴルゴダの丘へ向かう道筋になぞらえてあって、「これは行かねばなるまい」とザクザクあまり整備されていない道を突き進むことにしました。この道には、十幾つの石碑が建っており、それにはイエスのゴルゴダに向かう物語の各シーンが解説されていました(写真参照)。それを一つ一つ写真に撮っていたのですが、猛烈な勢いで、ヤブ蚊が襲いかかります。おそらく僕は「久048々のごちそう」だったのでしょう。というわけで、僕は石碑を見ては佇み写真を撮り、すぐにヤブ蚊を追い払うために小走りに道をズンズン進んでいき、なにやら比叡山の回峰行みたいなことになってしまいました(少し大げさ)。でも、六百メートルほどの山道を一〇分足らずで走り抜け、殉教者の墓に一礼し、坂を下って中心街にある津和野カトリック教会に 向かいました。

050 こぢんまりとした教会ですが、ここも面白い教会で、中に入ると畳なんですね。そこにステンドグラスからの光が落ちている、というのは不思議な落ち着きというか、穏やかさを醸し出していました。外観もしっかりしているし、冬に雪の積もったときの様子などは非常に絵になります(そういう絵はがきを購入してしまいました)。教会の外には、乙女峠の物語りの展示室もあり、あらためて浦上キリシタン達の信仰心に感動してしまいました。「日本人は無宗教で・・・」などと訳知り顔で言う人がいるかもしれませんが、今から一四〇年前の「旅の話(各国に流配された浦上キリシタンは、その地での苦労話を「旅の話」として語り伝えまし052た)」を読むと、そんな考え、吹っ飛びますよ。おそらく、去年と今年、僕の講義を聴いてくれた学生諸君はうなずいてくれることでしょう。事実、「講義中で興味を持ったことでレポートを書きなさい」という課題を出したのですが、思った以上に「復活キリシタン」を題材にレポートを書く学生が多くてびっくりした記憶があります。おそらく学生諸君も、浦上信徒の信仰心に少なからず感動したのでしょう。ここもおすすめです。

068 先ほど電車がない、といいましたが、実は帰りの電車(同じSLにしました)が、到着から三時間後に新山口に向けて出発です。というわけで、正味三時間しか観光できません。乙女峠とカトリック教会でほぼ二時間を取ってしまったので、その後、ちょっとはずれの方にある森鴎外と西周の旧家跡に走り、駅への帰り道で太鼓谷稲成(たいこだにいなり)神社に行って(ちゃんと階段を上って参拝してきました、写真参照)、駅に着いたのは電車の発車一〇分前。これに津和野の小旅行は終了。けっこう歩いたなあ(アップダウンが激しくてちょっと疲れた)。後で宿の近くの足湯場で疲れを癒しました(宿は湯田温泉という温泉街)。

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September 04, 2008

『国家と宗教―宗教から見る近現代日本(上・下)』発売中!

Kokka_syukyo01 皆様、お久しぶりです。

実は、ほぼ一ヶ月前に出た本の宣伝をさせていただきます。法蔵館から『国家と宗教―宗教から見る近現代日本()』という本が現在発売中です。これは、京都仏教会が12回にわたって行った研究会の成果として編まれたもので、不肖僕も論文一本載せております。僕は先輩、後輩、知り合いの中からこのテーマで何か書いていただけそうな方々をお呼びするという、いわばブローカーネゴシエーターのようなことも多少やったこともあり、編集作業も多少お手伝いしました。
既にもう一つのブログでは「出ましたよ」と宣伝していたのですが、先日京都仏教会の方々とお話しした際「やはりもっと宣伝しなければ」という声があがりましたので、及ばずながら、僕のこのブログでもご紹介することにしました。目次は以下の通りです。

目 次
上  巻
発刊のことば     京都仏教会
理事長 有馬 頼底
はじめに 洗 建 田中 滋
総論:法律と宗教     洗 建

第一部.     「国家神道」形成期の葛藤
1.     国家神道の形成     洗 建
2.     近代国家と仏教     末木文美士
3.     神仏分離と文化破壊―修験宗の現代的悲喜     井戸 聡
4.     国家の憲法と宗教団体の憲法―本願寺派寺法・宗制を素材に     平野 武
5.     井上円了と哲学宗―近代日本のユートピア的愛国主義     岡田 正彦
6.     近代日本における政教分離の解釈と受容     小原 克博
7.     国家神道はどのようにして国民生活を形づくつたのか?
    ―明治後期の天皇崇敬・国体思想・神社神道     島薗 進

☆インタビュー:聖護院門跡門主宮城泰年
「国家神道体制下の本山修験宗」

第二部.     国家総動員体制下の宗教
8.     国家総動員体制下の宗教弾圧―第二次大本事件     津城 寛文
9.     植民地期朝鮮における宗教政策―各法令の性格をめぐって     川瀬 貴也
10.    近代日本仏教と中国仏教の間で―「布教使」水野梅暁を中心に     辻村志のぶ
11.    戦時下における仏教者の反戦の不可視性
    ―創価教育学会の事例を通じて     松岡 幹夫
12.     反戦・反ファシズムの仏教社会運動
     ―妹尾義郎と新興仏教青年同盟     大谷 栄一

下  巻
第三部.     戦後新憲法と宗教
13.     戦後新憲法体制と政教分離     洗 建
14.     遺骨収集・戦没地慰霊と仏教者たち
    ―昭和二七、八年の『中外日報』から     西村 明
15.     アメリカ合衆国における信教の自由をめぐる諸問題
    ―日米比校の一助として     藤田 尚則
16.     靖国問題     平野 武

☆インタビュー:日本基督教団牧師千葉宣義
「日本基督教団の戦後の歩みの中で 一人の牧師として」

第四部.     宗教の存在理由への問い―新自由主義経済体制下の「国家と宗教」
17.     宗教法人法改正問題     洗 建
18.     オウム反対の世俗的原理主義―転入届不受理の論拠と感情     芦田 徹郎
19.     地域の安心・国家の治安
    ―オウム問題から見た日本の「コミュニティ・ポリシング」     野中 亮
20.     宗教法人法の改正問題と情報公開
    ―広島高裁判決をめぐって     小池 健治
21.     「宗教関連判例の動向」について     橋口 玲
22.     国家が宗教的情操を語り始めるとき     野田 正彰
23.     憲法第九粂改正論と絶対平和主義     藤田 尚則
24.     意法改正論と政教分班論―憲法二〇条をめぐって     桐ケ谷 章
25.     観光立国「日本」と「宗教」
    ―世界遺産熊野古道の柔らかなナショナリズム     湯川 宗紀
26.     国会において「宗教」はいかに語られてきたか
    ―宗教間題の脱宗教化?     寺田 憲弘
27.     公益法人制度改革と宗教法人     田中 治

☆インタビュー:京都仏教会理事安井攸爾
  「反古都税運動と京都仏教会」

総括:宗教への交錯するまなざし―新自由主義経済体制下の宗教     田中 滋
あとがき     田中 滋

Kokka_syukyo02 非常に多くの方のご協力の下、浩瀚な本ができてしまいました(僕もまだ全部読み切れていません)。宗教学、法学、神学、仏教学、社会学など、様々な分野の論考が一緒になっている、という点でも「お買い得」だと思います。共に\3,675(税込み)です。
日本近現代にご興味のある方や、特に僕と似た分野を研究されている大学関係者の皆さまは、どうぞお買い求め(もしくは大学図書館に入れて)くださいますようお願いいたします。

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