韓国の「保守的」キリスト教と性的マイノリティ問題(世界宗教地勢ー韓国)
韓国はアジア有数のキリスト教国として知られている。最近の統計では、カトリック・プロテスタントを合わせた比率は約30%を占め(信仰を持つと答えた人口の約半数)、日本にも多くの韓国人宣教師が存在する。
韓国現代史を振り返ると、歴代大統領の過半数はクリスチャンであり、軍事政権下における民主化運動などの先頭に立つ牧師も多く、キリスト教は韓国現代史において欠かすことのできない存在感を示している。ただ、解放後の韓国のキリスト教は、冷戦構造のもと、「反共」という国是との親和性が高い「保守的な信仰(主としてプロテスタント)」も大きな勢力を有してきたのも事実である。その「保守性」が近年悪い意味で人々の耳目を集めている。その理由は彼らの性的マイノリティ(LGBT)への対応である。以下ではいくつかの関連事件のあらましを紹介しよう。
2012年9月に、韓国の公共放送KBS傘下のバラエティ専門チャンネルKBS Joyにおいて、「XY彼女」というタイトルのバラエティ番組が放映された。これはいわゆる「性的マイノリティ」の問題を取り上げたもので、司会者の一人も自らゲイであることをカミングアウトしたタレントが務めていた。この番組に対しては放映前から保守的な団体(宗教団体も含む)が放送中止を強く要求し、第一回目の放映当日には保守系団体がKBS本社前において社長退陣などを要求する抗議活動を行い、その混乱から、第二回目以降の放映ができなくなった。そのほか、同性愛を描いたドラマにも同様の抗議活動が行われた。
2014年6月7日、ソウルにおいて性的マイノリティの権利を主張する「クイア・パレード」が行われたが、このパレードにも、多くの保守系団体が物理的な妨害をし、現場は大混乱になった。これにもまた、保守的な信仰を持ち、同性愛嫌悪を前面に押し出すキリスト教の一派が加わっていた。彼らはパレードの前に寝転んで進行を妨害したり、「悔い改めよ、天国は近い、同性愛は罪」というプラカードを掲げたりした。このパレードには世界各国の参加者がおり、韓国社会の根強い同性愛嫌悪をアピールすることにもなってしまった。
2014年11月20日には、ソウル市で市民と専門家で構成された委員会で制定予定だった「ソウル市民人権憲章」の公聴会が、同性愛反対を掲げる団体によってまたもや激しい抗議活動を受け流会した。その人権憲章案に「同性愛差別禁止」とあったことに保守系団体が噛み付き、結局この憲章が制定されない(市民有志が自主的に宣言したが、ソウル市は公認せず)、という事態にまで至った。
このような保守系教会の激しい反同性愛運動は、旧約聖書に同性愛禁止があることを最大の根拠にしているが、韓国の場合は政治的な左右の対立とも重ね合わされている。たとえば同性愛容認派に「アカ(北朝鮮容認)」とレッテルを貼る動きなどを見ると、元来の保守的な傾向が近年の人権思想、リベラリズムの広がりに刺激を受けて却って先鋭化したものと見るべきだろう。もちろんこのような動きに対して、リベラル派からは反発と反省の声が出ている。2018年の平昌における冬季オリンピック開催を控える韓国において、このような動きは一層世界からの注目を浴びることになり、対応を迫られることになるだろう。
(『中外日報』2015年5月20日掲載)


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